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最高裁判所第三小法廷 昭和31年(オ)394号 判決 1957年2月19日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人鈴木由治の上告理由第一点について。

所論は、原判決が商法六〇二条または倉荷証券所持人の法律上の地位を誤解した違法があると主張する。ところで倉荷証券に寄託物の記載のほか、なお保管料等寄託物に関する費用は証券所持人が負担するものとする趣旨の文言の記載がある場合、第三者が裏書譲渡によりその倉荷証券を取得したときは、特段の事情のないかぎり、各当事者間に、その所持人が記載の文言の趣旨に従い右費用支払の債務を引受けるという意思の合致あるものと解するを相当とする。原判決の引用する第一審判決が、本件倉荷証券の関係について事実を確定した上、被上告人の請求を認めた理由は、結局右の趣旨に出でたのであつて、その解釈は正当であり、所論のような違法はない。

同第二点について。

所論は、原審は当事者の申し立てない事項について判決した違法があると主張する。しかし被上告人主張の請求原因たる事実によれば、本件の訴訟物が、本件寄託契約上の保管料等の債権であること明らかであり、またこの保管料等の債務が所論のように上告人の固有の債務たることを主張しているものとは認められない。そして原判決は、結局上告人が訴外会社から承継した保管料等の債務の存否を判断したのであるから、これを目して当事者の申し立てない事項につき判断したと解することはできない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小林俊三 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己)

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